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06.

★二弁 e ニュース263号[2005/10/13]★
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【理事者室だより】
 副会長フーフー日記・特別編(コラム調・野球バージョン)(副会長 伊東 卓)
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 10月になり、理事者の任期も半分を終えた。
 秋のロードが始まり、10月7日(金)には、理事者全員で金沢の弁護士業務改革シンポジウムに参加した。テーマは、「司法改革と弁護士業務〜弁護士の大幅増員時代を迎えて」。法曹人口増大、法曹養成制度、裁判員制度、日本司法支援センターと、今まさに司法改革の真っ最中である。身近な司法の実現に向けられた国民の期待は大きい。でも、いざ足元の弁護士業務を見つめたとき、底知れぬ不安を覚える弁護士は多いだろう。シンポはまさにこの点に触れようとするものだ。私が参加した第1分科会では、大・中・小都市におけるマーケティングの必要性が論じられた。私自身も、理事者を終えて果たして無事に業務復帰できるのかを考えると、「かるくヤバイ」どころの話ではない。自らの業務を考える上でも大変参考になった。
 翌8日(土)には、金沢から帰京し、クレオで行われた日弁連の新規登録弁護士研修の運営にあたる。当会は、この10月に58期新入会員149名を迎え、いよいよ会員数は3,000名を突破した。この日は、500名を超える東京三会の新規登録弁護士に対して、弁護士としての心構え、弁護士倫理などの研修が実施された。クレオを埋めつくした新人弁護士の熱気にあおられながら、自分も負けるわけにはいかん、と思わざるにはいられなかった。
 といった次第で、折り返し点を過ぎたところで、少し気分転換。会務とは関係ないが、明るい話題ということで、今回は野球の話をしたい。

 皆さんは「エイドリアン」をご存じであろうか。わかった方は映画の好きな方。そう、エイドリアンとは、映画「ロッキー」に出てくる主人公ロッキーの恋人の名前。映画のあらすじはというと、うらぶれた場末のボクサー・ロッキーが、突然指名されて世界チャンピオンと対戦する。油断していたチャンピオンと死闘を繰りひろげ、試合は判定へともつれ込むが、戦いを終えたロッキーは、傷だらけになりながらリング上で恋人の名を叫ぶ。「エイドリアーン!」
 思い出されたであろうか。感動的なラストシーンだ。ん?野球と何の関係があるの?その疑問は正しい。でも、野球の話なのだ。
 今年の夏の高校野球、神奈川県大会2回戦で起きた出来事だ。
 ある私立高と県立高とが対戦した。私立校は、この大会のシード校で過去優勝経験もある強豪校。対する県立校は、最近少し勝つようになったが、しばらく前は出ると負けが続いていた公立校である。戦前の予想は、当然シードの私立校有利。しかし、対戦の結果、3対2で県立校が私立校を見事に倒して金星を挙げたのだ。
 この試合で面白いのは、県立校の選手が全員で考えたという「かけ声」だ。
 県立校は初回に攻撃を仕掛け、連打で2点を先制してリードを奪うが、私立校はじわじわと県立校を追いつめ、終盤の7回表、1点差で私立校の攻撃を迎える。県立校は1死1,2塁、一打同点のピンチ。苦しい場面だ。マウンド上に選手が集まった。ベンチから伝令が走る。「活を入れろ。気合いの言葉だ!」そして、選手たちは空に向かって叫んだ。
 「エイ、ドリ、アーーーーーン!!!」
 県立校は、このピンチを1失点で乗り切ると、その裏決勝点を挙げ、1点差を守りきって勝ったのである。
 私はかつて高校球児で、今でも母校の応援に通う、野球大好き人間だ。しかし、「エイドリアーン!」というかけ声は、私も未だかつて聞いたことがない。かけ声ならば、「よっしゃー!」とか「さ
あ、いこうぜ!」あたりが普通だろう。「エイドリアーン!」というかけ声は、まさに前代未聞、凄い独創性だ。これを聞いた相手選手も、観客も、きっと頭の中が「?」で一杯になったに違いない。
 もちろん、県立校がこの試合に勝ったのは、このかけ声だけが原因ではない。
 新聞記事によれば、県立校は相手投手を研究して決め球を徹底的に練習し、これが的中して連打で先取点をたたき出し、格上の私立校の焦りを引き出したこと、選手の発案により、本格派のエースではなく3番手の軟投派投手を先発させて、かわすピッチングを展開し、私立校がその術中にはまったこと、これらが県立校の勝因として指摘されている。
 おそらく、戦う前に、彼らは自分たちで考えたのだろう。相手は難敵だ。でも、何とか勝ちたい。相手を研究し、投手の球筋を脳裏にたたき込んだ。考え抜いて先発投手も決めた。でも、きっとピンチに立たされることがあるだろう。苦しくなったらみんなで声を出して気合いを入れよう、と。
 そこで「エイドリアーン!」となったわけだが、なぜこのかけ声なのかは、悲しいかな、中年のオジサンには今ひとつよくわからない。新聞記事によれば、県立校の選手は、大会前、監督のすすめで映画「ロッキー」を見て、「スタンドのみんなのためにも戦っている」という思いを込めて、このかけ声を前もって決めたのだという。
 このかけ声一つとっても、彼らが勝つためにあらゆる想像力を働かせていたことがわかる。もし、彼らが決められたことしかできない高校生だったら、「エイドリアーン!」のかけ声は生まれなかったであろう。また、シード校を倒す金星を手に入れることもできなかったに違いない。目標を見定め、自由な発想であらゆる事態を想定し、解決策を考える。その想像力、独創性が勝利を呼んだ、この夏の「快挙」だと思う。ちょうど息子たちの年頃の若者たちの快挙に、中年のオジサンとしてはうらやましさを禁じ得ない。
 我が身を振り返って考えると、長年決められたことを繰り返していれば、説明も要らないし、居心地もいい。世の中、多少なりとも長く生きていると、ついそんな気になる。しかし、何も考えずにぬるま湯につかって安穏と過ごしていると、いつか「エイドリアーン!」と叫ぶ連中に足もとをすくわれる。
 これからやってくる競争時代を生き抜くためにはどうしたらいいか?誰しも気になるところであろうが、この若者たちの快挙は、その一つの答えを示しているような気がする。

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